夢を見た。
不思議な夢。
なぜか僕は泥棒で、
紙に包んだ札束を持って逃走中。
お巡りさんが追ってくる。
逃げなくちゃ、つかまっちゃダメだ。
札束が重くて持ちにくい。
タクシーに乗り込み行き先を告げる。
フィッツジェラルド空港まで行ってくれ。
一体どこだか自分でもわからない。
安心したのか、僕は眠ってしまう。
気がつくとタクシーは停まっていた。
空港じゃない、目の前には交番がある。
やられた、僕はタクシーを降り一目散に駆けだす。
お巡りさんが追ってくる。
札束が重いったらありゃしない。
もうダメか。
目の前に大勢の人たち、カメラ機材が並んでいる。
何かの撮影現場らしい。
僕はその中に札束を投げ込み、火をつけた。
みんなが驚く。
あたり一面大慌てだ。
その隙に僕は裏手のビルに逃げ込んだ。
外壁のパネルのようなものをつたって、屋上まで登る。
道を挟んだ向こうに空港が見える。
とてもあそこまでは行けない。
もはや札束もない。
ここまでか、そう思いながら遠くを見つめる。
そのビルは団地のようだった。
僕は団地の一室へと入りこむ。
そこには僕の家族がいた。
本当の家族ではない。
知らない人たちが5~6人。
でも僕の家族だった。
家の中には何もない。
なぜか僕の靴下が三足あり、
子供たちがそれで遊んでいる。
三足だからあと三日。
お父さんと一緒にいられるのはあと三日。
そんなことを言っている。
僕はなぜだか知らないけど、
そんな家族が無性に愛おしくて、
ずっと一緒に居たい、そう思った。
外から見つからないようにしなくちゃ。
夜は電気もつけずに息をひそめた。
みんなで身を寄せ合って寝た。
雑魚寝ってやつ。
みんなの寝息が聞こえてくる。
みんなの体温が伝わってくる。
僕は不思議な感情に包まれていた。
幸せだ。
こんな幸せを今まで感じたことがない。
僕の心はとてつもなく満たされていて、
真っ暗な部屋の中で妻に言った。
「なんか俺、幸せだよ。」
次の日、僕らはこっそり外に出た。
近くの土手の上をみんなで歩いた。
土手の下にはたくさんのバーベキューセットが並んでる。
大勢の人たちがバーベキューを楽しんでいた。
天気もいい、風も心地いい。
太陽の下、僕らも楽しくてしょうがない。
しばらく歩くと土手の端についた。
土手はここで終わりらしい。
僕は少し寂しくなる。
この幸せな時間がここで終わってしまう、そんな気がした。
家族の1人がこう言った、年配の男の人。
「夏休みも終わりだな。」
そうか夏休みだったのか。
同時に夏休みが幸せだったことを思い出した。
よく見ると、その年配の人は父だった、隣には母もいた。
ずっとこうしていたい。
このままでいたい、僕は願った。
そして父と母を抱き寄せた。
僕は幸せで、
とてつもなく幸せで
心から幸せを感じていた。
そんな夢
とてつもなく幸せな夢
そんな夢を見た。